辞典 / 文献

『ゾーハル』


視点: カバラ / 宗教 / 歴史 / 生命の木
テーマ: 生命の木 / 旧約聖書

概要

『ゾーハル』(ヘブライ語: זֹהַר、「光輝」の意)は、カバラ(カバラ)の中心文献。主に13世紀後半のスペインで成立したとされ、文献内部では2世紀のタンナ(律法学者)シモン・バル・ヨハイの教えを伝えるものと自称するが、実際の主要な書き手は13世紀の神秘家モーセ・デ・レオン(モーシェ・デ・レオン)であったとする見解が、近代以降の学術研究の主流な立場となっている。

歴史

『ゾーハル』はトーラー(モーセ五書)への神秘主義的注釈という体裁を取り、文献内部では2世紀のガリラヤの律法学者シモン・バル・ヨハイ(ラビ・アキバの高弟の一人で、伝説ではローマ当局の弾圧を逃れて息子と共に洞窟に13年間隠れ住んだと伝えられる人物)とその弟子たちの教えを伝える古代文書であると自称する。しかし、13世紀スペインの神秘家モーセ・デ・レオン(モーシェ・デ・レオン、Moshe ben Shem-Tov de León)が1280年代にこの文献を各地に流布させ始めたことが史料上確認されている。デ・レオンの死後(1305年)、彼が写したと主張していた「原本」を高値で買い取ろうとした人物に対し、その未亡人が原本など存在せず夫自身が書いたものだと証言したと伝えられる逸話が、20世紀の学者ゲルショム・ショーレムによる文献学的研究(言語的特徴・後代の思想への依拠関係の分析)と合わせて、デ・レオン単独著者説の根拠とされてきた。ただし、2000年代以降の研究(イェフダ・リーベス、モシェ・イデルらによる)では、デ・レオン一人による著作ではなく、彼を中心とする神秘家の集団(サークル)による共同的な成立を想定する説も提示されており、単独著者説かサークル説かという著者問題自体、現在も研究者の間で議論が続く未解決の論点である点には注意が必要である。

各伝統における意味

ユダヤ教内部のカバラにおける位置づけ

『ゾーハル』は、神と世界の関係、創造の過程、悪の起源といった神学的問題を、セフィロト(生命の木、生命の木)の象徴体系を用いて論じるカバラ文献群の中で最も中心的な位置を占める。ヘブライ文字の数価を用いた解釈技法「ゲマトリア」(ゲマトリア)も随所で駆使される。

キリスト教カバラへの影響

15世紀末以降、『ゾーハル』を含むカバラ文献の一部がラテン語に翻訳・紹介され、ピコ・デラ・ミランドラ(ピコ・デラ・ミランドラ)らによる「キリスト教カバラ」運動の主要な典拠の一つとなった。これはユダヤ教内部の『ゾーハル』本来の教説とは異なる、ルネサンス期における再解釈である点に留意する必要がある。

文学

物語的な枠組み(バル・ヨハイと弟子たちの対話・旅の描写)と神秘主義的注釈が織り交ぜられた独特の文体を持ち、中世ヘブライ語神秘主義文学の代表作として評価される。

関連ノード

参考文献

関連ノード(発見の質でグループ化)

文脈の発見

隣接の発見