辞典 / 概念

キミアトリア(イアトロケミー)


視点: 錬金術 / ヘルメス思想 / 歴史
テーマ: 錬金術

概要

キミアトリア(ラテン語: chymiatria、英語では iatrochemistry「イアトロケミー」とも呼ばれる)は、パラケルスス(パラケルスス)に始まる、疾病を化学的に調製した薬剤によって治療しようとする医療化学の潮流を指す。伝統的な四体液説(四体液説)医学に代わる新たな医療体系として、16世紀半ばから17世紀にかけてヨーロッパで大きな影響力を持った。

語源

ギリシャ語 chymeia(化学、錬金術)と iatros(医師)を組み合わせた語で、「化学による医療」を意味する。パラケルススの死後、彼の思想を継承した後継者たちによって、この呼称が用いられるようになった。

歴史

パラケルスス自身は16世紀前半、錬金術の技術を金属変成ではなく病気の治療のための薬剤精製に応用することを提唱し、伝統的なガレノス医学(四体液説に基づく医学)の権威を公然と批判した。パラケルススの死(1541年)後、その思想を体系化・普及させた後継者たちの運動が「キミアトリア」「イアトロケミー」と呼ばれるようになり、16世紀後半から17世紀にかけて、既存の大学医学界と激しい論争を繰り広げながらも、ヨーロッパ各地に広まった。フランドルの医師ヤン・バプティスタ・ファン・ヘルモント(1580年頃-1644年)は、パラケルススの三原質(硫黄・水銀・塩)(三原質)説を先在する物質原理として採用することには批判的な立場を取りつつも、化学的手法による薬剤調製と、体内の生命原理アルケウス(アルケウス)という概念を発展させ、この潮流をさらに前進させた。イアトロケミーの潮流は、パラケルススの死後およそ1世紀半にわたって続き、17世紀の近代化学の形成に大きな影響を与えた。

各伝統における意味

パラケルスス医学における位置づけ

疾病は、体液の不均衡ではなく、体外からの毒物・異物、あるいは体内の化学的過程(アルケウスの働き)の攪乱によって生じるとされ、鉱物由来の化学薬剤(水銀・アンチモン・硫黄の化合物など)による治療が提唱された。伝統的な四体液説医学とは、疾病の原因論・治療手段の両面で対立する立場である。

四体液説医学との対立

大学医学界の主流を占めていたガレノス医学(四体液説(四体液説)に基づく医学)の実践者たちは、キミアトリアの提唱する化学薬剤治療(特に水銀など有毒な鉱物の使用)を強く危険視し、両者の間には長期にわたる論争が続いた。

近代化学史における位置づけ

疾病治療を目的とした化学薬剤の系統的な調製・研究という側面は、後の近代薬学・分析化学の形成に重要な影響を与えたと評価されている。ただし、パラケルスス派の理論的枠組み(三原質説、アルケウス論など)自体は、近代化学の元素理論とは異なる思弁的な体系であり、両者を単純に連続的な発展として捉えるべきではない点に注意が必要である。

関連ノード

参考文献

関連ノード(発見の質でグループ化)

対比の発見

隣接の発見