概要
グレートマザー(太母、Great Mother)は、分析心理学における元型(元型)の一つ。生み育てる豊穣の側面と、飲み込み・支配する破壊的な側面を同時に併せ持つ、両義的な母性のイメージを指す。世界各地の神話に登場する地母神・豊穣の女神は、この元型が具体的な神格として表れたものと解釈される。
歴史
カール・ユング(カール・ユング)自身も母親元型について論じたが、この概念を独立した主題として体系的に論じたのは、弟子筋にあたるエーリッヒ・ノイマンである。ノイマンは1955年の著作でグレートマザーの図像を、先史時代の豊穣像から古代地中海世界の女神像まで、広範な資料をもとに分析した。
各伝統における意味
ギリシャ神話
大地の女神ガイア(ガイア)や、農耕・豊穣を司るデメテル(デメテル)は、グレートマザー元型の代表的な現れとして、しばしばユング派の議論で参照される。
両義性という論点
グレートマザーが単なる「優しい母」のイメージにとどまらないという点は、心理学的解釈においてしばしば強調される。生命を育む力と、生命を飲み込み押しつぶす力は、一つの元型の裏表として捉えられる。
参考文献
- Erich Neumann, The Great Mother: An Analysis of the Archetype, trans. Ralph Manheim, Bollingen Series XLVII, Princeton University Press, 1955. — グレートマザー元型を体系的に論じた本項の中心的典拠
- C. G. Jung, Four Archetypes: Mother, Rebirth, Spirit, Trickster, Bollingen Series, Princeton University Press. — 母親元型についてのユング自身の原論文「Psychological Aspects of the Mother Archetype」を収録