概要
カール・グスタフ・ユング(Carl Gustav Jung、1875年〜1961年)はスイスの精神科医・心理学者。分析心理学(ユング心理学)の創始者。神話・錬金術・宗教的象徴を心的過程の表現として研究したことで知られ、本プロジェクトが扱う多くの象徴の「心理学的解釈」の主要な参照点となる人物である。
歴史
チューリヒ大学で精神医学を学び、当初ジークムント・フロイト(ジークムント・フロイト)と協働したが、無意識の理解をめぐる見解の相違から1913年頃に決別。以後、独自に元型(元型)・集合的無意識(集合的無意識)・個性化過程(個性化)などの概念を展開した。
各伝統における意味
分析心理学(ユング自身の理論体系)
ユングは晩年、錬金術文献(ウロボロスなどのモチーフを含む)を、物質変成の記録としてではなく、心的変容過程(個性化)を象徴的に記録したものとして読み直した。これはユング自身の理論的立場であり、錬金術師たち自身が意図した意味とは異なる、後世からの心理学的再解釈である点を明確に区別する必要がある。
4機能タイプ論と四元素
ユングは『心理学的類型論』(1921年)で、思考・感情・感覚・直観という4つの心理学的機能からなるタイプ論を提唱した。この4機能を古代の四元素(四元素、火・風・水・地)になぞらえる解釈は、ユング以後の解説者・実践者の間でしばしば行われるが、ユング自身が四元素という枠組みそのものを体系的に採用したわけではない点には注意が必要である。
個性化過程の諸元型
個性化過程は、社会的仮面であるペルソナ(ペルソナ)を自覚することに始まり、抑圧された自己である影(影(シャドウ))、内なる異性像であるアニマ・アニムス(アニマ・アニムス)との対決・統合を経て、心全体の統合的中心である自己(自己(セルフ))の実現へと至るとされる。
共時性論
晩年、物理学者ヴォルフガング・パウリとの交流を経て、因果関係によらない意味のある偶然の一致を説明する「共時性」(共時性)という概念を提唱した。
哲学
分析心理学は神話・宗教・錬金術を「人類共通の心的パターン(元型)の表現」として扱う点で、比較宗教学・比較神話学とも接点を持つが、方法論としては経験科学というより解釈学に近いとする批判も学術的に存在する。
心理学
蛇・ウロボロスをはじめとする象徴を「無意識の内容が意識に現れたイメージ」として分析した。代表的著作に『変容の象徴』『心理学と錬金術』などがある。
現代文化
MBTI をはじめとする性格類型論の源流の一つとしても広く言及されるが、これはユング自身の理論からの派生的・簡略化された展開である点に注意。
関連ノード
- 蛇 — 元型的イメージとしての解釈対象
- ウロボロス — 個性化過程の象徴としての解釈対象
- 能動的想像法 — 提唱した技法
- 錬金術 — 心理学的に再解釈した伝統
- 四元素 — 4機能タイプ論がなぞらえられることがある古代の枠組み
- 影(シャドウ) — 提唱した元型概念
- アニマ・アニムス — 提唱した元型概念
- 集合的無意識 — 提唱した無意識の層
- 共時性 — 提唱した非因果的連関の原理
- ペルソナ — 提唱した概念
- 自己(セルフ) — 個性化過程の到達点として提唱した概念
- ジークムント・フロイト — 当初協働し、後に決別した人物
- 元型 — 提唱した概念
- 個性化 — 提唱した中心的過程概念
- リズ・グリーン — 分析心理学を占星術の解釈に応用した著述家
参考文献
- C.G. Jung, The Red Book: Liber Novus, ed. Sonu Shamdasani, W.W. Norton, 2009. — 能動的想像法の実践記録
- C.G. Jung, Psychology and Alchemy, Collected Works Vol. 12, 2nd ed., Princeton University Press, 1968. — 錬金術の心理学的再解釈の代表作
- C.G. Jung, Symbols of Transformation, Collected Works Vol. 5, 2nd ed., Princeton University Press, 1967. — 神話・象徴の心理学的解釈を展開した著作
- Deirdre Bair, Jung: A Biography, Little, Brown, 2003. — 近年の標準的なユング伝記研究
- C.G. Jung, Psychological Types, Collected Works Vol. 6, Princeton University Press, 1971(原典1921年). — 4機能タイプ論の一次資料