概要
影(シャドウ)は、カール・ユング(カール・ユング)の分析心理学における中心的な元型(元型)の一つ。自我が意識的に受け入れがたいとして抑圧・否認した、自己の側面を指す。
語源
ドイツ語 der Schatten の訳語。
歴史
ユングは、患者の夢分析を通じて、自我が「自分ではない」として排除しようとする心的内容が、しばしば人格化された「影」の形で夢や幻想に現れることを見出し、これを個性化過程における重要な対決対象として理論化した。
各伝統における意味
分析心理学における位置づけ
影は集合的無意識(集合的無意識)に存在する元型の一つとされ、個人が自己の中で認めたくない性質(弱さ、攻撃性、欲望など)を象徴する。ユングは、影を排除・否認するのではなく、意識化し統合することが、個性化過程(個性化)における重要な課題であるとした。
神話・物語における表れ
分析心理学的解釈では、物語上の「敵役」「怪物」「分身」といったモチーフが、しばしば主人公の影の投影として読み解かれる。
文学
「ドッペルゲンガー(分身)」を扱う文学作品は、しばしば影の元型の文学的表現として解釈される。
現代文化
「シャドウワーク」という語で、自己の否認された側面と向き合う実践として、現代のセルフヘルプ言説にも取り入れられている。
関連ノード
- カール・ユング — 提唱者
- 集合的無意識 — 影が存在するとされる無意識の層
- アニマ・アニムス — 個性化過程で後続して対決するとされる元型
- ペルソナ — 背後に影を抑圧するとされる社会的仮面
- 元型 — 影が分類される上位概念
- 個性化 — 影との対決・統合が課題となる過程
参考文献
- C.G. Jung, Aion: Researches into the Phenomenology of the Self, Collected Works Vol. 9ii, 2nd ed., Princeton University Press, 1968. — 影の概念を含む自己論の一次資料
- Anthony Stevens, Jung: A Very Short Introduction, Oxford University Press, 1994. — ユング心理学の標準的入門書