辞典 / 神格

ウェヌス


視点: 神話 / 宗教 / 西洋占星術 / 西洋美術
テーマ: 西洋美術

概要

ウェヌス(ラテン語: Venus)はローマ神話における愛・美・豊穣の女神。英語の惑星名 Venus(金星)は直接この女神の名に由来する。ギリシャ神話のアプロディーテ(アプロディーテ)と同一視されるが、両者は成立の系譜が異なる別個の女神として区別する必要がある。

『ミロのヴィーナス』(ルーヴル美術館、紀元前2世紀頃、作者不詳の古代ギリシャ彫刻)
『ミロのヴィーナス』(ルーヴル美術館、紀元前2世紀頃)。作者不詳の古代彫刻。Public domain, via Wikimedia Commons

語源

ラテン語 venus はもともと「魅力」「愛らしさ」を意味する普通名詞であり、そこから固有名詞としての女神名が派生したとされる。英語 venereal(性の)などの語も同語源。

歴史

ウェヌスはもともとローマ土着の農耕・豊穣に関わる女神であったが、共和政末期から帝政期にかけてギリシャ神話のアプロディーテの神話・図像が広く取り入れられ、両者の同一視が進んだ。ユリウス・カエサルはウェヌスを自らの氏族(ユリウス氏族)の祖と称し、政治的にも重要な女神として扱われた。

各伝統における意味

ローマ神話

愛・美・豊穣を司る女神として、ローマの国家的祭祀にも組み込まれた。トロイア戦争の英雄アエネアス(ローマ建国神話の祖とされる)の母ともされる。

ギリシャ神話との同一視

図像・神話の多くはギリシャのアプロディーテから借用されたものであり、ウェヌス固有の土着的性格(農耕神としての側面)とは層が異なる。本プロジェクトでは、ローマ土着のウェヌスと、それに重ね合わされたギリシャのアプロディーテ由来の神話群を、可能な限り区別して記述する。

ルネサンス期の再解釈

ルネサンス期のイタリア美術では、古代ギリシャ・ローマ神話の復興の中でウェヌスが繰り返し主題として取り上げられ、単なる異教の女神像を超えて、新プラトン主義的な「天上の愛(アモル・ケレスティス)」の象徴として再解釈された。この再解釈は古代ローマ人自身の信仰とは異なる、ルネサンス期人文主義者による独自の思想的読み替えである。

美術

サンドロ・ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』『プリマヴェーラ』(プリマヴェーラ)はルネサンス美術におけるウェヌス表現の代表作として特に著名。

哲学

新プラトン主義哲学者マルシリオ・フィチーノは、ウェヌスを「天上の愛」と「地上の愛」という二重の寓意として解釈し、ルネサンス期の人文主義的世界観に大きな影響を与えた。

関連ノード

参考文献

関連ノード(発見の質でグループ化)

対応の発見

文脈の発見

隣接の発見