概要
ジョン・ディー(John Dee、1527年-1608年頃)は、エリザベス1世治世のイングランドで活躍した数学者・地理学者・占星術師・オカルティスト。ケンブリッジ大学で数学を修めた当代随一の学者でありながら、晩年は霊媒エドワード・ケリー(エドワード・ケリー)とともに天使との交信を試み、「エノキアン魔術」(エノキアン魔術)と呼ばれる独自の魔術体系を生み出した人物として知られる。
歴史
数学・航海術・地図学の専門家として、エリザベス1世の探検事業に助言を与える一方、王室占星術師として戴冠日の選定などにも関わった。1580年代、霊媒エドワード・ケリーと組み、水晶球や黒曜石の鏡(スクライング、スクライングを参照)を用いて天使と交信したと主張し、その記録を日誌に残した。これらの交信記録は、後世「エノキアン魔術」として体系化される素材となった。
各伝統における意味
エリザベス朝の学者としての側面
同時代人からは当代最高峰の数学者・科学者の一人と見なされており、蔵書家としても知られる(生涯で4000冊以上の蔵書を収集したとされる)。この学術的側面と、後年の天使交信・オカルト活動の側面は、同一人物の中に併存する異なる層として区別して記述する必要がある。
天使との交信とエノキアン魔術
ケリーを霊媒として行われた一連の交信セッションの記録は、「エノキアン語」と呼ばれる独自の文字・言語体系、および「ウォッチタワー」と呼ばれる図表群を含む複雑な体系として残された。ディー自身の存命中にはこの体系が組織的な魔術実践として確立されることはなく、19世紀末の黄金の夜明け団(黄金の夜明け団)による再発見・体系化を経て、近代西洋儀式魔術の中核的要素の一つとなった。
関連ノード
- エドワード・ケリー — 交信セッションの霊媒を務めた協力者
- エノキアン魔術 — 交信記録から成立した魔術体系
- スクライング — 交信に用いた技法
- 黄金の夜明け団 — 後世にディーの体系を再発見・組織化した結社
参考文献
- Benjamin Woolley, The Queen’s Conjurer: The Science and Magic of Dr. John Dee, Adviser to Queen Elizabeth I, Henry Holt, 2001. — ディーの生涯を扱う標準的な一般向け伝記
- Deborah E. Harkness, John Dee’s Conversations with Angels: Cabala, Alchemy, and the End of Nature, Cambridge University Press, 1999. — ディーの天使交信記録を扱う学術的研究