概要
パメラ・コールマン・スミス(Pamela Colman Smith、1878年-1951年)は、イギリス生まれの画家・舞台美術家。アーサー・エドワード・ウェイト(アーサー・エドワード・ウェイト)の指示のもと、「ライダー・ウェイト版タロット」(1909年刊)全78枚の図像を実際に描いた人物。
歴史
イギリス人の父とアメリカ人の母のもとに生まれ、幼少期をジャマイカで過ごした経験が、その独創的な色彩感覚・図像表現に影響を与えたとされる。舞台美術・挿絵の分野で活動し、女優エレン・テリーや作家ブラム・ストーカーらとの交流も持った。1901年頃に黄金の夜明け団(黄金の夜明け団)に入団し、団の会員であったウェイトと出会った。
各伝統における意味
タロット図像制作における役割
1909年、ウェイトの依頼を受け、わずか数か月という短期間で全78枚の図像を完成させたとされる。特に、それ以前の多くのタロットデッキが小アルカナ(数札)を単純な記号的図柄にとどめていたのに対し、スミスは小アルカナ56枚すべてに具体的な情景・人物を描き込んだ。この点は、後の近代タロットデッキの図像的標準を形作った、彼女自身の独創的な貢献とされる。
ソーラ・ブスカ版からの影響説
大英博物館が1907年に取得したソーラ・ブスカ版タロット(ソーラ・ブスカ版)を、ウェイトの依頼でデッキ制作にあたっていたスミスが実見した可能性が指摘されている。それまで記号的な図柄にとどまっていた小アルカナ全56枚に具体的な情景を描き込むという着想は、このソーラ・ブスカ版から影響を受けたとする見方が多くのタロット研究者によって示されているが、スミス自身がこれを明言した一次資料はなく、状況証拠に基づく推測である。
過小評価されてきた功績
長年、このデッキは単に「ウェイト版(Waite deck)」とだけ呼ばれ、実際に図像を制作したスミスの名は等閑視される傾向にあった。契約上、スミスは制作料として一括の報酬を受け取ったのみで、デッキが版を重ねて広く普及した後の印税等は得られなかったとされる。近年の研究・出版では、彼女の功績を正しく反映する形で「ライダー・ウェイト・スミス版(Rider-Waite-Smith deck)」という呼称が用いられる機会が増えている。
美術
タロット制作以外にも、舞台装置・衣装デザイン、児童書の挿絵など幅広い分野で活動した。
関連ノード
- アーサー・エドワード・ウェイト — デッキの理論面を指示した依頼主
- 黄金の夜明け団 — 所属していた結社
- 愚者 — 図像を描いたカードの一枚(代表例)
- ソーラ・ブスカ版 — 小アルカナの完全図像化という着想の影響源とされるデッキ
参考文献
- Stuart R. Kaplan, Pamela Colman Smith: The Untold Story, U.S. Games Systems, 2018. — スミス研究の標準的な伝記・図版資料集
- R.A. Gilbert, A.E. Waite: Magician of Many Parts, Crucible, 1987. — ウェイトとスミスの協働関係を扱う伝記研究