
Path / 象徴
象徴とは何か
「象徴」という言葉は、日常でもよく使われます。でも、ただの目印やマークと何が違うのか、あらためて聞かれると答えにくいのではないでしょうか。
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薔薇
一輪の花としての薔薇に、意味は一つではありません。ギリシャ・ローマではアフロディーテ/ウェヌスに連なる愛の花。キリスト教では聖母マリアの花。西洋魔術・ヘルメス思想では「薔薇十字」という秘密結社の名にまで転用される。同じ花が、互いに関係のない複数の意味を同時に背負っています。
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十字架
さらに極端な例。十字の形そのものは、キリスト教が生まれるずっと前から、東西南北・四元素を表す図形として各地に存在していました。それが磔刑の記憶と結びつき、キリスト教で最も重要な象徴へと転用されます。形は同じでも、意味は後から何度でも上書きされる。
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目(プロビデンスの目)
三角形に囲まれた目の図像は、古代エジプトの「ホルスの目」、近世キリスト教美術の「摂理の目」(三位一体の全知を表す)、そして18世紀以降のフリーメイソンの図像・アメリカ合衆国の国璽と、系譜的なつながりがないまま、まったく別の文脈で何度も再利用されてきました。今では陰謀論のモチーフとして語られることすらあります。一つの図像が、無関係な文脈を渡り歩く様子がよくわかる例です。
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象徴主義
「象徴(Symbole)」という言葉が芸術批評の正式な用語になったのは、実は19世紀末のことです。1886年、詩人ジャン・モレアスが発表した「象徴主義宣言」がきっかけでした。直接描写せず、示唆によって内面のイメージを表現する手法として、象徴が意識的に選び取られるようになります。
ここまでで見えてくること
薔薇も十字架も目の図像も、一つの形に複数の、時には無関係な意味が積み重なっています。単純な目印(サイン)が「一つの形に一つの意味」で成り立つのに対して、象徴は「一つの形が、文脈によって別の意味を持ち続けられること」で成り立っている——ひとまず、そう考えておきます。次の問い、「なぜ人はこのような象徴を生み出すのか」へつながっていきます。