辞典 / 美術作品

タロット・ド・マルセイユ(マルセイユ版)


視点: タロット / 西洋美術 / 歴史
テーマ: タロット

概要

タロット・ド・マルセイユ(マルセイユ版)は、17世紀以降のフランスで広く流通した木版画タロットの標準的パターンの総称。大アルカナ22枚に固定の番号・キャプションを付し、小アルカナ(数札)はスートの記号を反復配置するだけの簡素な図柄とする様式で、18〜19世紀のフランスにおけるオカルト的タロット解釈の多くが、このパターンのデッキを土台として展開された。

タロット・ド・マルセイユ、ジャン・ドダル版「手品師」(リヨン、1701年-1715年頃)
タロット・ド・マルセイユ、ジャン・ドダル版「手品師」(リヨン、1701年-1715年頃)。Public domain, via Wikimedia Commons

語源

名称は南フランスの主要な印刷都市マルセイユに由来するが、「タロット・ド・マルセイユ」という呼称自体は当時の同時代的な呼び名ではなく、20世紀にタロット研究家・出版者ポール・マルトー(グリモー社)が、この系統のデッキ群を指す名称として遡及的に定着させたものである点に注意が必要である。

歴史

現存する初期の代表例としては、ジャン・ノブレ版(パリ、1650年頃)が挙げられる。今日「タロット・ド・マルセイユ」の基準図像として広く複製されているのは、ニコラ・コンヴェルが1760年にマルセイユで制作したデッキであり、20世紀にポール・マルトー(グリモー社)がこれを校訂・復刻したことで、現代における「標準形」としての地位を確立した。

各伝統における意味

18〜19世紀オカルト的再解釈の土台

クール・ド・ジェブラン(『原初世界』)、エッティラ(エッティラ、ただし後年は独自デッキを設計)、エリファス・レヴィらによる18〜19世紀のオカルト的タロット解釈の多くは、占い専用に設計されたデッキではなく、この遊戯用として流通していたマルセイユ版の図像を事後的に読み替える形で展開された。

図像の標準化

大アルカナの序列・カード名は体系によって入れ替わりが見られ、例えば「力」と「正義」の番号は、本パターンでは「力」が11番、「正義」が8番とされることが多い(黄金の夜明け団以降の体系ではこれが入れ替えられる)。

美術

木版で刷った輪郭線に、型紙(ポショワール)を用いて彩色するという印刷技法を特徴とする。手彩色によるヴィスコンティ・スフォルツァ版のような一点ものの宮廷デッキや、銅版画で小アルカナまで図像化したソーラ・ブスカ版(ソーラ・ブスカ版)とは異なり、小アルカナは記号の反復にとどまる簡素な図柄であり、幅広い流通を前提とした量産的な印刷媒体としての性格を持つ。

関連ノード

参考文献

関連ノード(発見の質でグループ化)

隣接の発見