概要
「堕天使」は、神に背いて天から追放されたとされる天使をめぐる概念。実際には由来の異なる少なくとも2つの伝承が、後世に一つの物語として融合したものである。
各伝統における意味
伝承1: ルシファー/サタンの反逆(誇りによる堕天)
イザヤ書14章の「明けの明星、ルシファー」への言及(本来は特定のバビロニア王への嘲りの詩)と、ヨハネの黙示録(ヨハネの黙示録)12章の「天における戦い」の記述が、後代のキリスト教解釈者によって結び付けられ、「神に反逆し傲慢さゆえに天から落とされた天使ルシファー(ルシファー)=サタン(サタン)」という物語が形成された。この物語は聖書の単一箇所に直接記されているものではなく、複数箇所の後世の統合的解釈である点に注意する。ジョン・ミルトン『失楽園』(『失楽園』)はこの伝承を文学的に大成させた代表作。
伝承2: 見張りの天使(欲望による堕天)
旧約聖書創世記6章1〜4節の「神の子ら」が人間の娘たちと交わったという断片的な記述を、旧約偽典『エノク書』(『エノク書』)が大幅に敷衍し、「見張りの天使(ウォッチャーズ)」と呼ばれる天使の一群が人間の女性への欲望のために天を離れ、禁じられた知識(鍛冶・化粧・呪術など)を人間に伝えたとする物語を描いた。これは伝承1とは起源も動機(傲慢 対 欲望)も異なる、別系統の堕天使物語である。この一群の指導者格とされるのがアザゼル(アザゼル)である。
文学
ジョン・ミルトン『失楽園』(『失楽園』、1667年)は伝承1を基に、堕天使ルシファー(サタン)を中心的な文学的形象として描いた近世英文学の代表作。
関連ノード
- ルシファー — 伝承1の中心人物
- サタン — 伝承1における同一視先
- アザゼル — 伝承2における指導者格
- ヨハネの黙示録 — 伝承1の一次資料の一つ
- 『失楽園』 — 伝承1を文学的に大成させた代表作
- 『エノク書』 — 伝承2の一次資料
参考文献
- George W.E. Nickelsburg, 1 Enoch 1: A Commentary on the Book of 1 Enoch, Chapters 1–36; 81–108, Fortress Press, 2001. — エノク書の標準的学術註解
- Jeffrey Burton Russell, The Devil: Perceptions of Evil from Antiquity to Primitive Christianity, Cornell University Press, 1977. — 悪魔観念の成立史を扱う標準的学術研究
- Jeffrey Burton Russell, Satan: The Early Christian Tradition, Cornell University Press, 1981. — 初期キリスト教における悪魔論の展開を扱う続編
- Henry Ansgar Kelly, Satan: A Biography, Cambridge University Press, 2006. — サタン概念の成立史に関する近年の学術研究
- John Milton, Paradise Lost, ed. Alastair Fowler, 2nd ed., Longman, 1998(原著1667年/1674年). — 堕天使神話の近世文学における代表的再解釈