概要
ヘラ(古代ギリシャ語: Ἥρα)はゼウスの正妻であり、オリュンポス十二神の女王として結婚・家庭・出産を司る女神。ローマ神話のユノ(Juno)と同一視される。
語源
Ἥρα の語源には諸説あり、確定した定説はない。
歴史
古典期ギリシャ各地(特にアルゴス、サモス島)で有力な信仰を集めた女神で、結婚生活の守護者として崇拝された。
各伝統における意味
ギリシャ神話
ゼウスの正妻でありながら、ゼウスの度重なる不貞と、その結果生まれた子(ヘラクレスを含む)への激しい敵意という筋書きが、神話上のヘラの主要な性格として繰り返し描かれる。
ヘラクレス神話における役割
ヘラクレスの名は「ヘラの栄光」を意味するとされるが、神話内ではヘラはヘラクレスを終生苦しめる存在として登場する。ヘラクレスを正気を失わせ自らの子を手にかけさせたのもヘラの策略とされ、これが「12の功業」の直接の契機となった。功業の一つ、ヒュドラとの戦いの際にヘラクレスの足を挟んだ大蟹をヘラが星座(蟹座)にしたという神話も伝わる。
イリスとの関係
虹の女神イリス(イリス)は、ホメロスの叙事詩においてヘラ専属の使者として頻繁に登場し、ヘラの意志を他の神々や人間界に伝える役割を担う。
パリスの審判
トロイア王子パリス(パリス)による美の審判で、アテナ・アプロディーテとともに競い合ったが敗れたとされる(『パリスの審判』を参照)。
美術
孔雀を伴う姿、王冠(王冠)を戴いた威厳ある女性像として描かれるのが典型的図像。
関連ノード
- ゼウス — 夫
- ヘラクレス — 敵意を向け続けた対象
- 蟹座 — ヘラの命により星座になったとされる蟹
- カリストの神話 — 異伝の一つでカリストを熊に変えるヘラが登場する神話
- パリス — 審判に敗れた相手
- 『パリスの審判』 — この神話を描く絵画
- イリス — 専属の使者として仕えた女神
- 王冠 — 典型的図像で戴く持物
参考文献
- Walter Burkert, Greek Religion, trans. John Raffan, Harvard University Press, 1985. — ギリシャ宗教研究の標準的学術文献
- Timothy Gantz, Early Greek Myth: A Guide to Literary and Artistic Sources, Johns Hopkins University Press, 1993. — 各神話の異伝を古典文献に即して整理した標準的資料集