概要
五芒星(ペンタグラム)は、5つの頂点を持つ星形の図形。古代から護符・象徴として用いられ、近代西洋儀式魔術(西洋儀式魔術)では中心的なシンボルの一つとして体系化された。
語源
「ペンタグラム」はギリシャ語で「5」を意味する πέντε(ペンテ)と「線」を意味する γράμμα(グランマ)の合成語に由来する。
歴史
古代バビロニア・ギリシャで既に用いられていた図形で、ピタゴラス教団が象徴として用いたという伝承もある。中世ヨーロッパでは、五芒星がキリストの5つの傷、あるいは護符としての魔除けの力を持つ図形として様々な文脈で用いられた。
各伝統における意味
古代・中世
魔除け・護符としての用法が広く見られるが、単一の一貫した意味体系があったわけではなく、時代・地域によって解釈は多様である。
近代西洋秘教(黄金の夜明け団以降)
黄金の夜明け団の体系では、五芒星の5つの頂点に四元素(火・風・水・地)と第五元素(霊、エーテル)を配当する解釈が確立された。「五芒星の小結界儀式(Lesser Banishing Ritual of the Pentagram)」(五芒星の小結界儀式(LBRP))は、この体系における基本的な結界・浄化の儀式として知られる。
正位置と逆位置
儀式魔術の文脈では、頂点が上を向く正位置と、下を向く逆位置とで異なる意味(例えば精神の物質に対する優位、あるいはその逆)が付与されることがある。この意味づけは西洋魔術内部の教説であり、20世紀以降の一部のサブカルチャー文脈で「逆五芒星=悪魔崇拝」という単純化されたイメージが広まったが、これは儀式魔術の伝統内部での多様な用法を単純化した、後代の通俗的なイメージである点に注意が必要である。このイメージの起点の一つは、19世紀フランスの著述家エリファス・レヴィ(エリファス・レヴィ)が発表した、五芒星を配した「バフォメット」(バフォメット)の図像にあるとされる。
現代文化
現代のポピュラーカルチャーでは、五芒星がしばしばオカルト・魔術一般を表す記号として単純化されて用いられるが、これは儀式魔術内部での本来の複雑な意味づけを反映していない。
関連ノード
- 西洋儀式魔術 — 中心的なシンボルとして用いる伝統
- 四元素 — 五芒星の頂点に配当される元素
- 5 — 頂点の数に対応する数の象徴
- 五芒星の小結界儀式(LBRP) — この体系における基本的な結界儀式
- エリファス・レヴィ — 「バフォメット」図像を通じて後世のイメージに影響を与えた人物
- バフォメット — 五芒星を配したレヴィの図像
- 金貨(ペンタクル) — 語源・図像上しばしば混同される別系統のシンボル
参考文献
- Israel Regardie, The Golden Dawn: A Complete Course in Practical Ceremonial Magic, 6th ed., Llewellyn Publications, 1989(初版1937-1940). — 五芒星儀礼の黄金の夜明け団内部の一次資料
- J.E. Cirlot, A Dictionary of Symbols, trans. Jack Sage, 2nd ed., Routledge, 1971. — 象徴図像学の標準的参照辞典