概要
天使を9つの階級(位階)に分類する体系。5〜6世紀頃に成立したとされる文書『天上位階論』(著者は偽ディオニュシオス・アレオパギタ、使徒言行録に登場する実在の人物アレオパギタのディオニュシオスと同一視されていたが、現在では別人の後世の著者による仮託文書とする説が定説)に由来する。
歴史
『天上位階論』は新プラトン主義の影響を強く受けた5〜6世紀のギリシャ語文書とされ、中世西欧のキリスト教神学(トマス・アクィナスなど)に大きな影響を与えた。旧約・新約聖書における天使に関する断片的な記述(ケルビム、セラフィムなど個別の名称は聖書に登場する)を、新プラトン主義的な階層秩序の枠組みで体系化し直したものである。
各伝統における意味
キリスト教神学(中世スコラ学)
上位から、セラフィム(熾天使)・ケルビム(智天使)・トロノス(座天使)の第一位階、ドミニオン(主天使)・ウィルトゥス(力天使)・ポテスタス(能天使)の第二位階、プリンキパトゥス(権天使)・アルカンゲルス(大天使)・アンゲルス(天使)の第三位階、という9階級で構成されるとされる。大天使ミカエル・ガブリエル・ラファエル・ウリエルは、この体系では下から2番目の「大天使」位階に位置づけられる。
なお、メタトロン(メタトロン)やサマエル(サマエル)はユダヤ教神秘主義に由来する別系統の天使伝承であり、偽ディオニュシオスの九階級論には直接含まれない。両者の伝承を歴史的に混同してはならない。同様に、16世紀のジョン・ディーに由来する「エノキアン魔術」(エノキアン魔術)に登場する天使群も、名称・階層とも全く異なる独自の体系であり、本九階級論とは系譜の異なる別系統として区別する必要がある。
哲学
新プラトン主義の「一者からの流出」という宇宙論的枠組みが、天使の位階論の理論的背景にあるとされる。
関連ノード
- 大天使ミカエル — 大天使位階に属する
- 大天使ガブリエル — 大天使位階に属する
- 大天使ラファエル — 大天使位階に属する
- 大天使ウリエル — 大天使位階に属する
- メタトロン — 別系統(ユダヤ教神秘主義)の天使伝承
- サマエル — 別系統(ユダヤ教神秘主義)の天使伝承
- 9 — 位階の数と関連づけられる数の象徴
- エノキアン魔術 — 名称・階層とも異なる別系統の天使体系
生命の木から見た整理(任意)
本項は本プロジェクト独自の整理モデルであり、歴史的事実の記述ではない。黄金の夜明け団の対応表では、天使の位階と生命の木の各セフィラを対応づける体系があるとされる(詳細は今後追記)。
参考文献
- Pseudo-Dionysius the Areopagite, The Celestial Hierarchy, in Pseudo-Dionysius: The Complete Works, trans. Colm Luibheid, Paulist Press, 1987. — 天使の九階級論の一次資料
- David Keck, Angels and Angelology in the Middle Ages, Oxford University Press, 1998. — 中世天使論研究の標準的学術文献
- Gustav Davidson, A Dictionary of Angels, Including the Fallen Angels, Free Press, 1967. — 個々の天使の典拠を整理した参照文献