概要
モーセ(ヘブライ語: מֹשֶׁה モシェー)は、旧約聖書『出エジプト記』を中心に描かれる指導者・預言者。ユダヤ教における律法(トーラー)の授与者とされる。本プロジェクトでは特に「青銅の蛇(ネホシュタン)」の逸話を通じて蛇クラスターに接続する。
語源
「モーセ」の語源については、ヘブライ語動詞 מָשָׁה(マーシャー、「引き出す」)に由来するという聖書内部の語源説明(出エジプト記2章10節)と、古代エジプト語で「〜から生まれた者」を意味する要素(例: トトメス=トト神から生まれた者、の msy)に由来するとする言語学的な説の2系統がある。後者が学術的には有力視されることが多いが確定はしていない。
歴史
モーセを歴史上実在した単一の人物として同定できる考古学的・同時代史料は現時点で確認されておらず、出エジプト記の記述の史実性については聖書学・エジプト学で議論が続いている。
各伝統における意味
ユダヤ教
出エジプトの指導者であり、シナイ山で十戒(十戒)を含む律法を神から受けたとされる、ユダヤ教で最も重要な預言者。
蛇との関わり(民数記21章)
荒野での放浪中、民が神とモーセに逆らったため「燃える蛇」に襲われたが、モーセが神の命により青銅の蛇(ネホシュタン)を作って掲げると、それを見た者は救われたという逸話が『民数記』21章に記される。これは『創世記』3章の蛇(蛇、創世記)とは別のエピソードであり、そこでは蛇が誘惑者としてではなく、治癒・救済をもたらす媒体として描かれている点で対照的である。この両義性は、蛇ノードの「概要」で述べた象徴の多層性を示す代表例といえる。
美術
ミケランジェロ(ミケランジェロ・ブオナローティ)によるモーセ像(角のある姿での表現。ヘブライ語 קֶרֶן keren「光線/角」の訳語の揺れに由来するとされる)など。個別作品は今後ノード化する。
関連ノード
- 蛇 — 青銅の蛇(ネホシュタン)の逸話を通じた接続
- 十戒 — シナイ山で授かった律法
- ヒソプ — 過越の儀式で用いられた植物
- 創世記 — 「モーセ五書」として伝統的に帰される文書
- ヘルメス・トリスメギストス — ルネサンス期に同時代の人物と誤認された人物
- 英雄の旅 — 代表的事例として言及される枠組み
- エリヤ — 新約聖書の山上の変容の場面で共に現れるとされる人物
- ミケランジェロ・ブオナローティ — 彫刻『モーセ像』の制作者
参考文献
- Jan Assmann, Moses the Egyptian: The Memory of Egypt in Western Monotheism, Harvard University Press, 1997. — モーセ像の歴史的記憶としての形成過程を扱う学術研究
- William H.C. Propp, Exodus 1–18: A New Translation with Introduction and Commentary, Anchor Bible, Doubleday, 1999. — 出エジプト記の標準的学術注解